9月6日の朝、テノール歌手のルチアーノ・パヴァロッティLuciano Pavarotti 氏が死去しました。
重体だという情報は数日前からありましたが、日本時間の午後2時をすぎたあたりから
急にネットラジオがパヴァロッティの歌声を流し始め・・・・。
その知らせは各国で取り上げられ、彼が世界中で愛され惜しまれた人だったとことを実感します。
個人的には何も知るよしもない、雲の上の大スターながら
私はほんの数日間のみ、一般の方よりは近くにいられたことがあります。
(もちろん私は直接コンタクトなんてできない、超下っ端の立場です)
当時も、彼の声をきくために世界中から観客がやってくるような状態。
クラシックオーケストラと、電気的スピーカーシステムとを共存させるため、テクニカル現場はかなりピリピリしたムードでした。
また歌う本人もどうやら体調が万全でもないと伝えられていて、
とにかく無事に、彼の声(とくに例のハイC)が出ますように〜というのが関係者一同の思いでもありました。
短い来日中にたくさんの取材をこなし、会場リハーサルに到着したのは本番3時間ほど前だったでしょうか。
・・・では、ちょっとシステムのチェックをお願いしましょう・・ということで、
氏はちょいちょいとオケとやり取りしつつ、「Turandot トゥーランドット」を歌い始めました。
そのとき、私はほんとに偶然、彼のほんの数mの位置(上手前方)に立っていたんです。
自分の役割としては全くステージまわりにはいられない立場なんですが、
なにかの打ち合わせでその場にいたんですね。で、ご本人が歌い始めたらば、もう〜動けないですよ。
というか、この目で、こんな近くで見れてる・聞けてることに感動しちゃって身体が動きません。
そして、歌い始めたら本人の「歌スイッチ」が入ったのか、
リハーサル用に1コーラスとかではなく、どんどん続けて歌っていく・・・。
えー?いいのか、いいのか?このまま最後まで歌っちゃうのか??
そんな周囲のハラハラドキドキはものともせず、
はい、最後の「Vincero~!」までいってしまいました。もうブラボー!!(幸せすぎて溶けそう)
本番では、ステージからはるか離れた2階席あたりをウロウロするのが仕事でありましたが、
あのとき、その肉声を生で聞けた感激は忘れられません。
そして、その体験を、パヴァロッティ素晴らしい!という話をすることで、
なぜだか私にはいろんな幸運?がくることがしばしばおこりました。
あの場にいた、というだけで実績のない私に仕事をくださる方がいたり、
思いがけない方との交流がうまれたり。
それほどクラシックやオペラに深い造詣があるわけでもない私ですが、とにかくパヴァロッティを語ると世界が明るくなるような、そんな作用があるような気さえしてきます。
そりゃ〜世界中から人気があるわけだ。。
あの大きな身体の背面からも響いてくるような、その声。
彼が歌いはじめると、世界がうねり波打つかのようでした。
ミューズに祝福された声の持ち主が存在したことを、それを感じられたことを幸福に思います。
※写真は若き日のLuciano Pavarotti 。オペラの登場人物スタイルですね。